AIで「もう1人の自分」を作る。作業時間を最大80%削減した、“レポート作成・自動化”プロジェクト
Dialogue | File 003


2025.12.19
Financial Services
AIで「もう1人の自分」を作る。作業時間を最大80%削減した、“レポート作成・自動化”プロジェクト
PUBLIC GATE LLC. 代表 村田雅幸さんと
証券取引所で27年間、上場推進や上場審査などの業務に携わってきたPUBLIC GATE合同会社代表の村田雅幸さん。同社はIPOを志す経営者向けの会員制コミュニティ「PUBLIC GATE」を運営し、月1回の勉強会を実施するほか、新規上場企業の分析レポートや各企業のニュース解説を会員向けに発信しています。
サロン運営を行う中で課題とされていたのは、年間100本以上にも及ぶレポート作成をいかに効率化するか。これまでは代表である村田さん自身が一つ一つの情報に目を通し、手作業でレポートを作成していたため、かなりの工数が割かれていたのだそう。そこで、Biz Architectsと共に取り組んだのが、AIで「もう1人の村田さん」を作り上げ、ファイナンスレポート作成を効率化するプロジェクトでした。
一体どのようにAIを活用し、どんな成果に結びついたのか。Biz Architects代表の大江真揮人とともに、約3ヶ月間に及んだプロジェクトを振り返ります。
AIで「もう1人の自分」を作り、日々のレポート作成業務を効率化
――会員制コミュニティ「PUBLIC GATE」ではどのようなレポートを発信されているのでしょうか?
村田:主に2種類あって、1つは新規上場企業のレポートです。企業は新規上場するとき、有価証券届出書などの資料を公表することになっています。ただ、これが数字と堅い表現ばっかりでどうにも読みづらいんですね。なので、数値情報と共に「投資家から見た場合、この会社はこういうところが強み」「上場審査上、これは今後は論点になりそう」といった定性的な分析を加えて発信しています。
もう1つは、既に上場している会社の適時開示情報の解説です。M&Aや資金調達、役員異動など、投資家にとって重要なニュースを読み解きレポートしています。
もう1つは、既に上場している会社の適時開示情報の解説です。M&Aや資金調達、役員異動など、投資家にとって重要なニュースを読み解きレポートしています。
――レポート作成にはどれほどの時間を要していたのでしょうか?
村田:新規上場のレポートは、資料を読み込んでから書き上げるまで90〜120分ほどかかっていましたね。年間60社程度が上場するので、それだけで相当なリソースを割いていました。
適時開示の解説は1本あたり60分ほど。レポート作成にあたり、企業の公式サイトをはじめ、株価の推移や別サイトなどさまざまな情報元を参照する必要があるからです。リサーチの手順が煩雑で、前々から効率化したいと考えていたんです。
大江:村田さんから最初に相談を受けたとき、作業工数を減らしながらも、いかにレポートの質を保てるかがポイントだと感じました。単純に資料を読み込むだけではなく、村田さんの思考をAIのプロンプトに落とし込むことで、レポートのアウトラインを自動生成できるのではないかと考えたのがプロジェクトの始まりです。
適時開示の解説は1本あたり60分ほど。レポート作成にあたり、企業の公式サイトをはじめ、株価の推移や別サイトなどさまざまな情報元を参照する必要があるからです。リサーチの手順が煩雑で、前々から効率化したいと考えていたんです。
大江:村田さんから最初に相談を受けたとき、作業工数を減らしながらも、いかにレポートの質を保てるかがポイントだと感じました。単純に資料を読み込むだけではなく、村田さんの思考をAIのプロンプトに落とし込むことで、レポートのアウトラインを自動生成できるのではないかと考えたのがプロジェクトの始まりです。
――AIで「もう1人の村田さん」を作るプロジェクトでもあったんですね。
大江:そうですね。レポート作成の自動化というより、「AI村田さん」作成プロジェクトのほうが正確かもしれません(笑)。
作業時間を最大80%削減。AIは助手のような存在
――プロジェクトはどのように進行していったのでしょうか?
大江:まず、村田さんがレポートを書く際にどのような観点を大切にしているのかをご本人にヒアリングしました。公開された各企業の情報に対して、どこを「面白い」と感じるのかといった部分ですね。そうした村田さんの視点を整理し、言語化しながらプロンプトに落とし込んでいきました。
また、村田さん独自の口調のインプットもあわせて行いました。例えば、IPOのレポートでは「堅調に推移した」といった硬いファイナンス用語が使われがちですが、村田さんはあえて砕けた表現や例え話を盛り込んでいます。それらを再現するために、表現においても細かくプロンプトを設定しました。
その後は実際に各社のレポートをAIに読み込ませて、出てきたレポートを村田さんに確認いただき、「もっとこうしたい」というフィードバックを反映させながら精度を高めていったのが大まかな流れです。
村田:フィードバックのラリーは、全部で20回から30回ほど行ったと思います。僕自身の考えを反映するのはもちろん、表記する金額の単位を千円から百万円単位に変更してもらうなど細かいオーダーにも応えてもらいました。
大江:汎用的なプロンプトだと面白みのないレポートになるし、特定のパターンに特化させすぎると応用が効かない。その塩梅の調整にもこだわりました。
また、村田さん独自の口調のインプットもあわせて行いました。例えば、IPOのレポートでは「堅調に推移した」といった硬いファイナンス用語が使われがちですが、村田さんはあえて砕けた表現や例え話を盛り込んでいます。それらを再現するために、表現においても細かくプロンプトを設定しました。
その後は実際に各社のレポートをAIに読み込ませて、出てきたレポートを村田さんに確認いただき、「もっとこうしたい」というフィードバックを反映させながら精度を高めていったのが大まかな流れです。
村田:フィードバックのラリーは、全部で20回から30回ほど行ったと思います。僕自身の考えを反映するのはもちろん、表記する金額の単位を千円から百万円単位に変更してもらうなど細かいオーダーにも応えてもらいました。
大江:汎用的なプロンプトだと面白みのないレポートになるし、特定のパターンに特化させすぎると応用が効かない。その塩梅の調整にもこだわりました。
「AI村田さん」から出力される適時開示レポートの例
――具体的にはどれほどの業務効率化が達成できたのでしょうか?
村田:新規上場のレポート作成は作業時間が最大80%削減されて、1本あたり15分から30分で済むようになりました。有価証券届出書はフォーマットがおおよそ決まっているためAIが読み込みやすく、高い成果を得ることができたのだと思います。一方、上場企業の適時開示は各社が独自のフォーマットで発表するので難易度が高い。とはいえ、平均すると50%ほど作業時間を削減できています。もう、劇的に楽になりましたね。
大江:フォーマットが統一されているものとそうでないもので効果に差が出たのは、現段階でのAIの課題でもありますね。ここは、今後改善の余地があると思います。
大江:フォーマットが統一されているものとそうでないもので効果に差が出たのは、現段階でのAIの課題でもありますね。ここは、今後改善の余地があると思います。
――レポートを受け取ったサロン会員の反応はいかがですか。
大江:たしかに気になります。「AIを使っているんですか?」という指摘はありませんでしたか?
村田:ほとんどの人がAIを導入したことに気づいていないと思います(笑)。というのも、AIが出力したものをそのまま出すのではなく、7割くらいの精度で上がってきた文章に加筆修正しているからです。レポートの素案を作る作業をAIに任せ、最後は必ず自分で手を入れる。量と質を担保する上では、このバランスがちょうどいいなと感じています。AIは私にとって、レポートを下書きしてくれる助手のような存在です。
村田:ほとんどの人がAIを導入したことに気づいていないと思います(笑)。というのも、AIが出力したものをそのまま出すのではなく、7割くらいの精度で上がってきた文章に加筆修正しているからです。レポートの素案を作る作業をAIに任せ、最後は必ず自分で手を入れる。量と質を担保する上では、このバランスがちょうどいいなと感じています。AIは私にとって、レポートを下書きしてくれる助手のような存在です。
課題の本質を見極めるためには、ワークフローの整理が不可欠
――Biz Architectsとの共同プロジェクトを振り返り、どのような点で他コンサルティング会社との違いを感じましたか?
村田:他のコンサル会社さんとご一緒した経験がないので、厳密に比較したわけではありませんが、クライアントのビジネスに対する理解度は高いと感じました。Biz Architectsは私の業務内容はもちろんのこと、レポートが持つ付加価値を適切に捉えてくれたんです。
IPOがどういう流れで行われるのか、どんな書類が公表され、何が審査のポイントとなるのか。あるいは、投資家がどこに着目するのか。IPOというニッチな業界に対しても理解が深く、私の説明に対して適切かつ迅速にキャッチアップしてくれました。
大江:ありがとうございます。クライアントの業務を徹底的に理解することはコンサルタントの基本だからこそ重要視しています。
例えば、私たちはワークフローの整理を仕事として依頼されていなくても、自主的にそれを行っているんです。ワークフローの整理は、あらゆるプロジェクトで価値を生む起点になると考えています。業務の担当者が普段どのような場所から情報を受け取り、アウトプットに繋げているのかを細分化しなければ、本質的な課題が見えてこないからです。「AI村田さん」プロジェクトにおいても、レポート作成の一連の流れを理解したからこそ、自動化すべきポイントが明確になりました。
村田:素晴らしいですね。僕自身、IPOを目指す企業に対してコンサルティングを行なっていますが、結局、良いコンサルといまいちなコンサルの分かれ目は「いかに相手を深く理解するか」だと思うんです。医師が患者の病状を正しく理解せず、処方箋を出したらいけないのと同じですよ。
IPOがどういう流れで行われるのか、どんな書類が公表され、何が審査のポイントとなるのか。あるいは、投資家がどこに着目するのか。IPOというニッチな業界に対しても理解が深く、私の説明に対して適切かつ迅速にキャッチアップしてくれました。
大江:ありがとうございます。クライアントの業務を徹底的に理解することはコンサルタントの基本だからこそ重要視しています。
例えば、私たちはワークフローの整理を仕事として依頼されていなくても、自主的にそれを行っているんです。ワークフローの整理は、あらゆるプロジェクトで価値を生む起点になると考えています。業務の担当者が普段どのような場所から情報を受け取り、アウトプットに繋げているのかを細分化しなければ、本質的な課題が見えてこないからです。「AI村田さん」プロジェクトにおいても、レポート作成の一連の流れを理解したからこそ、自動化すべきポイントが明確になりました。
村田:素晴らしいですね。僕自身、IPOを目指す企業に対してコンサルティングを行なっていますが、結局、良いコンサルといまいちなコンサルの分かれ目は「いかに相手を深く理解するか」だと思うんです。医師が患者の病状を正しく理解せず、処方箋を出したらいけないのと同じですよ。
――そういったクライアントへの深い理解も、Biz Architectsの強みなんですね。
大江:そうですね。今回の場合、我々のような小回りの利く規模の組織だからマッチした部分があったのかなと。それに、私たちはメンバー全員が商社や金融機関、事業会社などコンサルティング以外のキャリアを経験していますから、現場目線で向き合おうという共通認識を持っているんです。
村田:企業の規模に関わらず、事業というものは現場単位では小さな事業部やチーム、あるいは個人単位で動いています。クライアントから提示する課題だけではなく、そこには人間関係やクレーム対応といった普遍的で等身大の課題もあるものです。大上段から理想論を語るのではなく、現場の人間や課題にしっかりと向き合ってくれたことが嬉しかったですね。
村田:企業の規模に関わらず、事業というものは現場単位では小さな事業部やチーム、あるいは個人単位で動いています。クライアントから提示する課題だけではなく、そこには人間関係やクレーム対応といった普遍的で等身大の課題もあるものです。大上段から理想論を語るのではなく、現場の人間や課題にしっかりと向き合ってくれたことが嬉しかったですね。
テクノロジーを活用したバックオフィス支援で、企業の価値を最大化
――今後、一緒に取り組みたいテーマはありますか。
村田:上場準備中の企業の事業計画を一緒に進められると嬉しいです。私のクライアントには、自分たちの価値を伝えきれておらず、事業計画にブラッシュアップの余地がある企業さまもいらっしゃいます。
そして、おそらくその裏側には、数字の管理体制における課題が存在するんです。実際、クライアントの資料を見ていると似たような数字が各部門に点在していたり、あるタイミングからいきなりフォーマットが変わっていたりするケースも少なくありません。これは非常にもったいない。ワークフローを整理してフォーマットを整えるだけで、会社への評価は見違えるように変わります。そうした部分の改善をBiz Architectsとともに行っていけたら面白いかもしれません。
大江:上場審査では、ガバナンスがどれだけ体系化されているかが厳しく見られるようになっていますよね。散らかった状態を整理するだけでも投資家からの目線は変わってきます。テクノロジーによる自動化を駆使したバックオフィス支援も、Biz Architectsとしては力を入れていきたい部分です。ぜひ、お力になれることがあればご一緒させてください。
そして、おそらくその裏側には、数字の管理体制における課題が存在するんです。実際、クライアントの資料を見ていると似たような数字が各部門に点在していたり、あるタイミングからいきなりフォーマットが変わっていたりするケースも少なくありません。これは非常にもったいない。ワークフローを整理してフォーマットを整えるだけで、会社への評価は見違えるように変わります。そうした部分の改善をBiz Architectsとともに行っていけたら面白いかもしれません。
大江:上場審査では、ガバナンスがどれだけ体系化されているかが厳しく見られるようになっていますよね。散らかった状態を整理するだけでも投資家からの目線は変わってきます。テクノロジーによる自動化を駆使したバックオフィス支援も、Biz Architectsとしては力を入れていきたい部分です。ぜひ、お力になれることがあればご一緒させてください。
対談のお相手
村田雅幸(むらた まさゆき)さん
PUBLIC GATE合同会社 代表。1991年より27年間、証券取引所に勤務。2003年に執行役員に就任し、ナスダックジャパン市場の撤退からヘラクレス市場立ち上げの責任者として従事。2006年からは、自主規制部門の新規上場審査と上場廃止審査の担当役員を務める。2010年には、大阪証券取引所とジャスダック取引所の統合の責任者として、上場制度の設計や市場創設業務の陣頭指揮を執る。2013年以降は、東京証券取引所の執行役員としてマザーズ市場などの上場推進業務に当たり、約500社のIPO上場誘致、上場審査を経験。2018年、パブリックに成長を目指す経営者と共に歩むパートナーとなることを目的に、PUBLIC GATE合同会社を設立。
